Near法 (ID NOW)
- 2022年2月24日
- 新型コロナウイルス感染症
Near法の原理
新型コロナウイルスの検査方法には抗原検査やPCRの他にも多くの検出方法があります。抗原検査が簡便な方法となりますが、感度が低いことから一般的にはPCR検査が重要視されています。しかし、PCRは温度を上下させてRNAを増幅させるために反応時間がかかることが弱点です。そこで温度変化がなく(等温)遺伝情報(RNAやDNAなどの核酸)を増幅させる方法として等温核酸増幅法というものが開発されています。等温核酸増幅法はNEAR法やLamp法などがありますが、今回はAbott社の「ID NOW」で採用されている、NEAR法について概説したいと思います。
NEAR法はNicking Enzyme Amplification Reactionの略称となっており、その名の通りNicking Enzymeという酵素を使用した増幅(Amplification)反応(Reaction)となっています。Nicking EnzymeとはDNAの片方の鎖にのみに切り込みを入れて切断する酵素(ニッカーゼ)のことです。
ここから原理についてACS Synth. Biol. 2020,9 2861-2880 Isothermal SARS-CoV-2 Diagnostics: Tools for Enabling Distributed Pandemic Testing as a Means of Supporting Safe Reopenings から引用して説明させていただきます。
コロナウイルスはRNAウイルスなので基本的には1本鎖で存在しております。その中でも特徴的な配列があり、その配列部分を緑と赤で示しています。そこに2種類のプライマー(合成起点となる断片)とDNA合成酵素(DNA polymerase)を入れます。プライマーはコロナウイルスのターゲットサイトとなる緑や赤の部分と相補的な形をしており、そこを起点に2本鎖(DNA)が作られます。つまりRNAからDNAを合成し、そのDNAをニッカーゼによって片方の鎖を切断し同様の反応を繰り返すことで遺伝情報を増幅させます。
DNA合成酵素とプライマーが正しく機能すれば、増幅する理屈ですが、実際はPCR法の95〜98%程度の感度と言われています。