足の浮腫
- 2022年2月15日
- 診断基準
足の浮腫、特に下腿から足背にかけても浮腫は下腿浮腫といって一般的によく起こる症状の一つです。原因は様々ですが、局所的な原因によって起こるものと全身性の原因によって起こるものに大別されます。また、浮腫を指で押して40秒以内に戻れば非圧痕性、戻らなければ圧痕性と分けられます。
<局所性の疾患>
慢性静脈不全
下腿浮腫で最も多い病態で約30%の人に認められると言われています。立ち仕事が多い人では若年でも夕方に足が浮腫むことがありますが、それも一種の慢性静脈不全状態といえます。初期には片側性、圧痕性ですが、慢性期には両側性、非圧痕性となります。対策としては下肢挙上や弾性ストッキングの使用になります。
静脈閉塞
深部静脈血栓症や下大静脈閉塞(肝硬変、腎嚢胞、腫瘍による圧迫)によって起こります。採血によるDdimerや肝機能、腫瘍マーカーなどの確認が必要です。
リンパ浮腫
リンパ管の鬱滞によって起こる浮腫になります。99%が二次性リンパ浮腫と言われ、何らかのリンパ管に関わる原疾患があります。また、横紋筋融解症などの筋肉が腫脹することによる浮腫や、蜂窩織炎や肥満によるリンパ浮腫もあります。
<全身性の疾患>
全身性の原因の場合は内的な要因になりますので、基本的には両側性の浮腫を示すことが多いです。
ナトリウム過剰
うっ血性心不全、腎不全によるナトリウム利尿の異常に伴う浮腫
低アルブミン血症
低栄養、ネフローゼ症候群、肝硬変によって血中のアルブミンが低下すると血管内に水分が保持できなくなり浮腫が起こります(膠質浸透圧の低下)
血管性浮腫(遺伝性、好酸球性)
血管炎
薬剤性(Ca blocker, ACE阻害薬, チアゾリジン系薬剤(ピオグリタゾン)ステロイド、Ndaids)
甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症
ビタミンB1欠乏症
ビタミンB1欠乏によって起こる代表的な疾患は「脚気」です。脚気による脚気心まで来す前に下腿浮腫を示す軽度な脚気症状を捉えることはあります。日本では戦前に「亡国病」と呼ばれていましたが、現在ではほぼ脚気を見ることはありません。しかし、糖質の過剰摂取、インスタント食品を常食としている人や、胃切除後の患者、ビタミン喪失量の多い血液透析中の患者などには今も発症のリスクがあります。
日常の診察において、まずは下腿浮腫の有無を見逃さないことが重要です。さらに、圧痕性かどうか実際に触れなければ分からない情報を収集しつつ、上記の鑑別から必要な採血や経過についての問診、職業形態から病態を絞っていくことが重要です。