肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスとプレベナー)
- 2022年1月9日
- ワクチン
肺炎は悪性新生物、心疾患についで第3位の死因となる疾患です。高齢になると誤嚥リスクが上昇することで肺炎での死因が上がっていると考えられています。肺炎と一括りに行っても、その原因となる原因となる微生物はさまざまで、肺炎球菌が最も多く、次いでインフルエンザ菌、肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミドフィラとなっています。そのため肺炎球菌ワクチンで肺炎予防することは非常に重要です。ちなみにここで出てきているインフルエンザ菌はインフルエンザウイルスとは全く別のものですが、b型インフルエンザ菌という髄膜炎や喉頭蓋炎なども起こすインフルエンザ菌に対してはヒブワクチン(Hibワクチン・アクトヒブ)があります。
肺炎球菌ワクチンは65歳の者、あるいは60歳以上でも心臓、腎臓または呼吸器機能障害のある者およびAIDSの者に対してニューモバックス(PPSV23)の定期接種として1回皮下接種または筋肉内注射を行うこととなっています。このニューモバックスは2014年10月より定期接種開始されていますが、同2014年6月にプレベナー(PSV13)の任意接種が可能となっています。
- ニューモバックス(PPSV23)とプレベナー(PSV13)の違い
ニューモバックスはPPSV23と略記され、これは23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチンのことを指しています。肺炎球菌はその表面の莢膜型によって約93種類ものタイプに分けられていますが、ニューモバックスの23価とは23タイプの肺炎球菌をカバーしているという意味です。具体的には1,2,3,4,5,6B,7F,8,9N,9V,10A,11A,12F,14,15B,17F,18C,19A,19F,20,22F,23F,33Fの23種類となりますが、これを打てば約85%の肺炎球菌をカバーしています(太字はプレベナーに含まれていない莢膜型)。これに対して、プレベナーはPSV13と略されるように13種類の肺炎球菌をカバーしており1, 3, 4, 5, 6A, 6B, 7F, 9V, 14, 18C, 19A,19F,23Fの13種類になります(太字はニューモバックスに含まれていない莢膜型)。つまり、肺炎球菌のカバー率で言えば、ニューモバックスの方が優れているように見えます。ただ、ワクチンの効果としはプレベナーの方が優れていると考えられており、実際に米国と欧州の2つの多施設無作為試験ではプレベナーの方が優れた免疫原性を示していたと報告されています。これは、ニューモバックスはT細胞という細胞性免疫は活性化せず、IgG抗体を増加させる液性免疫の効果しかありません。そのため、肺炎球菌に対する抗体が減少した時点で、ワクチン効果が薄れます。また、IgG抗体は血流に乗って感染部位に作用しますので、血流の悪い中耳炎や副鼻腔炎、膿瘍などには効果が発揮しにくいのが特徴です。これに対してプレベナーは肺炎球菌の莢膜の一部分を人工的に細工することでT細胞性の細胞性免疫も誘導するようになっています。それによってニューモバックスにはないワクチンのブースター効果も持つことが推測されています。結論としてはニューモバックスの方がより広く肺炎球菌の莢膜型をカバーしているものの、プレベナーの方がワクチン効果を期待できるため、プレベナーの方が優れている可能性が高いといったところです。
ただ、高齢者の定期接種という点では肺炎球菌感染症の定期接種においては「プレベナー13(沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン)」を使用しないことと厚生省の指針で決まっているため、姫路市に限らずプレベナーを高齢者に接種することは難しいのが現状です。