梅毒の検査について
- 2022年2月1日
- 診断基準
梅毒はカリブ海の風土病だったと言われており、新世界の発見とともに全世界へ広がった性感染症です。日本でも江戸時代には非常に流行したと伝えられており、杉田玄白は「形影夜話」(1810年)で自分の患者の7〜8割が梅毒だったと記しています。現在では早期に診断されればペニシリン系抗生物質が効くため、病勢が進行することは少ないです。そうは言っても、内視鏡検査や手術前、輸血前などの感染症の確認のために梅毒の有無に関しては採血で確認することが一般的です。また、近年梅毒罹患患者が増加してきたことが問題となっており、年間でおよそ6000〜7000人の新規感染者が発生しており、これは10万人あたり5〜6人となります。つまり、単純に姫路市で当てはめると毎年30人弱が発症していることになります。
症状
梅毒は適切な治療を受けなかった場合、慢性感染症として徐々に進行し、I期、 II期、 III期、 IV期に分けられます。
I期(3週~3カ月):梅毒感染から約3週間の潜伏期の後に病原体侵入部位に自覚症状を欠く皮疹が出現。初期硬結、潰瘍化(硬性下疳)、無痛性の鼠径リンパ節腫脹。
II期(3カ月~3年):血行に乗って全身に症状が広がり、バラ疹や丘疹、 膿疱、 扁平コンジローム、 脱毛、 粘膜疹などの症状。
III期(3年~10年):ゴム腫
IV期(10年~)は心臓、 血管、 骨、 神経系など深部に広がる。
梅毒の血液検査
梅毒の血液検査には大きく分けて2種類あり、脂質抗原試験(STS)と梅毒菌体自体を抗原とする抗原試験(TP)があります。脂質抗原試験(STS)にはRPR法(ガラス板法)と梅毒凝集法があり、抗原試験(TP)にはTPHAとFTA-ABSテストがあります。このうち、脂質抗原試験(STS)のRPR法はカルジオリピン-レシチンというリン脂質抗体を検出するため、偽陽性となりやすく、膠原病、慢性肝疾患、結核やH I V感染症、妊婦、高齢者で偽陽性となることがあります。また、抗原試験(TP)は特異性が高いものの、一度梅毒に感染すると抗体価が低下しにくいという欠点があります。
そこで検査データは以下のように読み取ることが一般的です。
(RPR法:TP抗体)
( 陰性:陰性 )→梅毒非感染
( 陽性:陰性 )→偽陽性あるいは梅毒感染初期
( 陽性:陽性 )→梅毒あるいは治癒後の抗体保有者
( 陰性:陽性 )→治癒後の抗体保有者
また、RPR法は健診などで行われることが多いですが、前述したように偽陽性が多いため注意が必要です。RPR法で陽性だった場合は、TPHAとFTA-ABSで再検査すると同時に膠原病精査のため抗核抗体の確認やHIV検査も同時行うことが望ましいと言えるでしょう。