新型コロナウイルス変異株のPCR検査について
- 2021年12月29日
- 新型コロナウイルス感染症
2021年12月現在、新型コロナウイルスの変異株はオミクロン株が取り沙汰されております。診断という意味ではオミクロン株を含め、これからも発生すると思われる変異株を早期にPCR検査で同定することが重要です。しかし、変異株のPCR検査は広く施行されておらず、そこには技術的な課題があります。今回はその検査方法について少し触れてみたいと思います。
そもそもPCR検査はRNAやDNAの特定の部分で増幅したい部分を決めて、その部位に相当するプライマーを設計することで、微細な遺伝情報を増幅して検知することができる検査システムとなっています。もちろん、インプットするRNAやDNAの量が多ければそれだけ多く増幅されますが、PCRのサイクル数を25回程度ではなく35回など10回増やすだけで2の階乗となりおよそ1000倍の検出感度となります。
新型コロナウイルスはスパイクタンパクをコードしているRNAにおよそ30箇所変異箇所があり、30箇所のうちどの場所に変異が入っているかはまだ定まっておりません。そのためプライマーを3種類程度準備してPCR検査をかけているのが現状です。各々のプライマーには逆方向のプライマーも必要ですから、6種類のプライマーを入れてPCR検査をしていることになり、重合の温度調節や濃度などPCRとしては難易度が上がってしまうのは仕方がないことと思われます。また、30箇所の変異部位で実際に変異が入るのはランダムなので、せっかく準備したプライマーが外れてしまうことも十分に起こります。
新規変異株側も変異が一定に定まっていないため、このような技術的な問題が起こっているのが現状です。
個人的には30箇所の変異全てを網羅する形で複数回PCR検査を行って、当たり外れのないような形でPCR検査ができれば解決できるのではと思いますが、おそらく検査のコストの関係でそのようなことは難しいのかもしれません。