新型コロナウイルスに対するワクチン開発
- 2022年1月24日
- 新型コロナウイルス感染症
本日、阪大の森下先生の講演を聞くことができました。森下先生は大阪大学大学院の臨床遺伝子治療学の教授をされておりますが、同時にベンチャー企業を立ち上げられ、コロナウイルスに対する国産ワクチンにも携わっておられます。そこではDNAワクチンという従来にはない仕組みのワクチン開発を行なっておられ、今回は世界で開発中のワクチンの種類と国産ワクチンについてまとめています。
現在開発中のワクチンについて
①ウイルスワクチン
②ウイルスベクターワクチン
③タンパク質ベースのワクチン
④核酸ワクチン
①ウイルスワクチン
ウイルスを弱毒化あるいは不活化したワクチン。インフルエンザワクチンを含めた既存のワクチンはこの方法に該当します。コロナウイルス感染症に関しては、中国のチームが開発に成功したとされており、少なくとも7つのチームが開発しています。
②ウイルスベクターワクチン
アデノウイルスや麻疹ウイルスなどを運び屋として、コロナウイルスの遺伝情報を体内に運び入れて、免疫力をつけるものです。アストラゼネカがコロナウイルスワクチンとして開発したものが該当し、約25のチームが開発中と言われています。
③タンパク質ベースのワクチン
コロナウイルスのスパイクタンパク質など抗原となるタンパク質を直接体内に注入するタイプです。国内では塩野義製薬が取り組んでいます。
④核酸ワクチン
ファイザーやモデルナが開発したRNAワクチンが代表例です。コロナウイルスの遺伝情報が乗っている核酸と呼ばれるRNAやDNAを投与して、免疫力を獲得する方法です。国内では第一三共がRNAワクチンに取り組んでいる他、アンジェスがDNAワクチンを開発中です。
cDNAが体細胞に入ってきた場合、基本的には細胞質で浮遊しているので、ヒトのDNAには影響がないと思われます。ただ、Crisper-Casのようなことが起こってしまい、ヒトの細胞にコロナウイルスの遺伝情報が入り込んでしまう(knock-inノックイン)してしまう可能性も捨てきれません。この点に関しては森下先生より基本的には細胞分裂の遅い筋細胞に注入されるので、そのような可能性はあり得ないと仰っていたので、大丈夫なのだろうと思われます。むしろ、逆にコロナウイルスの抗体発現するような遺伝情報をどこかの細胞にノックインして、恒常的に抗体産生するDNA editing治療なども今後開発されるかもしれません。現在、コロナ禍でゲノムを体内に注入することに関してハードルが下がってきた印象があります。コロナ禍はゲノム編集を伴う治療薬が本格化する前触れなのかもしれません。