抗リン脂質抗体症候群
- 2022年2月5日
- 診断基準
抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome :APS)
抗リン脂質抗体症候群は抗リン脂質抗体と呼ばれる自己抗体が原因で、血栓症を主とする症状や不育症などの妊娠合併症を特徴とします。全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患をベースとした二次性と抗リン脂質抗体症候群が単発で発症した原発性に分けられます。
症状
血栓症症状を示すものが代表的で、下肢深部静脈血栓症(32%)、脳梗塞(13%)、血栓性静脈炎(9%)、肺塞栓症(9%)などが多いですが血小板減少(22%)網状皮斑(20%)不育症(8%)一過性脳虚血発作(7%)溶血性貧血(7%)心筋梗塞、狭心症(5%)なども知られています。また、胎盤の血流障害による胎盤機能不全が原因となり、習慣流産(妊娠中期(10週)以降)が報告されています。さらに、弁肥厚(>3mm)による僧帽弁・大動脈弁閉鎖不全は高率に認められます。
APSの分類基準案(札幌基準シドニー改変)
- 血栓症
画像検査や組織学的検査で確認された動脈、静脈、小血管での血栓症 - 妊娠に伴う所見
- 妊娠第10週以降の形態学的な正常な胎児の原因不明の死亡
- 重症の子癇前症・子癇または高度の胎盤機能不全による妊娠第34週以前の形態学的な正常な児の早産
- 母体の解剖学的・内分泌学的異常、染色体異常を除外した、妊娠第10週以前の3回以上連続した自然流産
検査基準(12週間以上5年未満の間隔で2回以上陽性となる)
- ループス抗凝固因子陽性
- IgG/IgM抗カルジオリピン抗体中等度以上陽性(40U/ml以上)
- IgG/IgM抗β2-グリコプロテインI抗体陽性(>99パーセンタイル)
臨床基準と検査基準の両方で、それぞれ1項目以上陽性のものをAPSと診断する。
治療方法
血栓症の既往がない場合は基本的に治療対象とはなっていません。また、基本的にステロイドや免疫抑制薬は有効性が示されていません。
- 血栓症の既往を有するがAPSの診断には至らない抗リン脂質抗体陽性者
低用量アスピリンなどの抗血小板薬のみの使用 - 血栓症の既往を有するAPS診断例(二次予防)
- 静脈血栓症の既往を有する例
INR 2~3のワルファリンによる抗凝固療法 - 動脈血栓症の既往を有する例
- 脳梗塞、虚血性心疾患(塞栓症を除く)の場合:
低用量アスピリン または クロピドグレル(プラビックス) または ワルファリン(INR 3~4) - 塞栓症、脳梗塞虚血性心疾患以外の血栓症の場合:
INR 2~3のワルファリン
- 脳梗塞、虚血性心疾患(塞栓症を除く)の場合:
- 治療下での血栓症の再発
INR 3~4のワルファリン、 または 低用量アスピリンとワルファリン(INR 2~3)の併用,または 未分画もしくは低分子ヘパリン皮下注
- 静脈血栓症の既往を有する例