ベクルリーと心拍数低下|東姫路よしだクリニック|姫路市阿保の内科・リウマチ科・アレルギー科

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ベクルリーと心拍数低下|東姫路よしだクリニック|姫路市阿保の内科・リウマチ科・アレルギー科

ベクルリーと心拍数低下

現在、姫路市の病院で新型コロナウイルス感染症の責任医師として多くの患者様を治療してきました。当院では重症管理が困難ですが、軽症から中等症Ⅰ、中等症Ⅱに至るまで幅広く診療にあたってきました。

その中で、ベクルリー点滴開始した患者さんの心拍数が低下することが多い気がします。実際にギリアド・サイエンシズ株式会社の市販直後調査にも心拍数低下も報告されています。

もちろん、一番可能性として高いのはベクルリーのRNAポリメラーゼ阻害剤以外の成分の副作用として心拍数が低下している可能性が高いと考えられます。ただ、「SARS-CoV-2」(COVID-19)がレニン-アンギオテンシン系の調節不全を起こしていることに、RNAポリメラーゼ阻害剤が加わることで、心拍数に影響を与えている可能性もあるのではと考えております。

現在、SARS-CoV-2がヒトの体内で増殖している時はウイルスの侵入過程でヒト細胞表面にあるACE2受容体は減少していると思われます。A C E2はレニン-アンギオテンシン系において、アンギオテンシンⅡ(ATⅡ)の一つのアミノ酸を切り離し、アンギオテンシン1-7(A1-7)を産生し、このA1-7はMas受容体と結合することでレニン-アンギオテンシン系を負に制御しています。つまり、ACE2受容体が減少している状態ではレニン-アンギオテンシン系が活性化し、血圧が上昇傾向になっていると思われます。もちろん、肺炎によるストレスや負荷により血圧は上昇しているので、これを正確に観察することは難しいと思われます。しかし、この状態に急激にRNAポリメラーゼ阻害剤が入ってくると、細胞表面のACE2受容体が増加し、レニン-アンギオテンシン系が再度負に制御され、血圧が低下します。しかし、血圧が低下した場合、それを通常ですと心拍数が増加するので、一般的に観察されている心拍数低下の説明にはなりません。

ただ、思考実験として、細胞膜へのACE2受容体のリクルートと新型コロナウイルスを考えてみるのは興味深いテーマだと思います。