腎性貧血と内服薬
- 2022年3月10日
- 一般
これまで腎性貧血に対する治療薬は注射製剤が一般的でしたが、近年ダーブロックという内服薬が使用できるようになっています。腎性貧血とは腎機能が低下することで腎臓から分泌されていたエリスロポエチンというホルモンが相対的に足りなくなることで起こる貧血です。エリスロポエチンが欠如すると鉄の代謝異常が起こるとともに、赤血球が正常に成長しなくなります。これまで腎性貧血に対してはエリスロポエチンを注射で投与する方法が取られてきました。これはホルモンを内服しても分解されてしまい、体内にホルモン製剤として取り込むことができなかったためです。しかし、ダーブロックという内服薬は私たちが本来備えている、エリスロポエチンを産生する能力を引き上げることで作用します。つまり、ホルモンであるエリスロポエチンが分解される問題点を克服している製剤になります。さらにダーブロックは鉄の利用障害となるヘプシジンを減少させる作用も知られています。このことにより鉄やビタミンなどが足りていても鉄の利用障害が起こっているヘプシジン高値の貧血にもダーブロックは奏功すると考えられています。例えば、リウマチなどの慢性炎症によりヘプシジンが増加し、慢性炎症による貧血は時々見受けられますが、このような時にダーブロックは良い治療効果を示すかもしれません。
また、日本透析医学会のガイドラインでは「成人CKD(慢性腎不全)患者の場合、維持すべき目標Hb値は11g/dl以上13g/dl未満とし、複数回の検査でHb値11g/dl未満となった時点で腎性貧血治療を開始することを提案」と、早期での薬物治療を推奨しています。そのために定期的に貧血(Hb値)を確認して適切なタイミングで内服開始することが重要です。