アルコール摂取について
- 2022年1月20日
- 診断基準
アルコールは肝臓で分解される
体内でアルコールを分解するのは肝臓にある酵素です。その酵素はアルコールデヒドロゲナーゼと言われており、この酵素の活性が飲酒量や食道癌や咽頭癌の発生に重要です。アルコールデヒドロゲナーゼは複数ありますが、そのうちADH1B(アルコールデヒドロゲナーゼ1B)とALDH2(アルデヒドデヒドロゲナーゼ2)がアルコール代謝の鍵となっています。
ADH1B(アルコールデヒドロゲナーゼ1B)
ADH1Bにはアルコール代謝速度が遅い低活性のタイプが存在し、ADH1Bが低活性型の場合、高活性型のヒトよりもアルコール分解速度が約13%遅く、さらに大量に連日飲酒するアルコール依存症患者の場合、飲酒翌日にまで高濃度のアルコールが残り、非常に酒臭くなると考えられています。日本人の約4.9%がADH1B低活性型で、アルコール依存症患者では約3割が低活性型であることが知られています。これは、ADH1Bが低活性であるとアルコールが体内に長く残るため耐性や依存性が発生しやすく大酒家やアルコール依存症になりやすいと考えられます。そして、この低活性型のADH1Bのヒトは通常より1.6~8.4倍の危険性で腔咽頭や食道の癌になりやすいことと報告されています。
ALDH2(アルデヒドデヒドロゲナーゼ2)
ALDH2(アルデヒドデヒドロゲナーゼ2)はアルコール分解にあたって一番働いている酵素と言われ、この酵素の遺伝子を両アリル(DNA二本鎖の相同領域)で欠損・欠損している人は少量飲酒で顔が赤くなるフラッシング反応を起こし、少ない飲酒量で二日酔いにもなりやすいことも示されています。日本人ではALDH2遺伝子の組み合わせが正常の方が約50%と一番多く、欠損・正常のヘテロ欠損者は約40%で欠損・欠損のホモ欠損者は約10%とされています。欠損・欠損のホモ欠損者は急性アルコール中毒など飲酒後早期の代謝異常に注意する必要がありますが、基本的にご自身で飲めないと下戸であると把握している人が多いため依存症や健康リスクは低いといえます。
健康リスクが高いタイプ
ALDH2(アルデヒドデヒドロゲナーゼ2)を欠損・正常で持っている方は日本人の約40%となりますが、ある程度お酒が飲めるけれども、アルコールの分解が正常の人より6倍程度遅いと言われています。そのため、そこそこ飲酒するわりに、発癌性のアセトアルデヒドが分解されず発癌リスクが上昇することが多いです。さらにADH1B(アルコールデヒドロゲナーゼ1B)も低活性型の場合は、ますますアルコールの分解が遅れるため最も健康リスクが高くなります。
依存症リスクが高いタイプ
日本人の約半分はALDH2(アルデヒドデヒドロゲナーゼ2)を正常に持っているため、しっかりとアルコールを分解できますが、その中でもDH1B(アルコールデヒドロゲナーゼ1B)も低活性型の場合はお酒が飲める分、依存症になりやすいといえます。
適切な飲酒量
適度な飲酒は1日平均純アルコールで20g程度の飲酒とされています。もちろん、女性や高齢者、飲酒後にフラッシング反応を起こす人は、飲酒量をさらに減らす必要があります。いかに目安となる飲酒量を記載しています。
ビール;ロング缶1本
ワイン(12%):ワイングラス(100〜120ml)2杯弱
日本酒(15%);1合
焼酎(20%):1合弱
ウイスキー(40%):原液50ml